埼玉県済生会加須病院では、5月1日付けで一般社団法人日本脊椎脊髄病学会「椎間板酵素注入療法実施可能施設」に認定されました。腰椎椎間板ヘルニアの治療法は、コルセット・薬などの保存療法/ヘルニアを取り除く手術療法がありましたが、椎間板酵素注入療法(ヘルニコア)は中間的な治療として新しい選択肢です。
取り組み
椎間板ヘルニア治療の新たな選択肢「ヘルニコア」
腰椎椎間板ヘルニアとは?
背骨は椎骨という骨が積み重なってできていて、椎骨の間でクッションの役割を果たしているのが椎間板です。椎間板の中心にはゼリー状の髄核があり、周囲をコラーゲン線維が囲んでいます。 腰椎(腰の椎骨)の間にある椎間板は、日常生活で負担がかかることも多く、何らかのきっかけでコラーゲン線維の亀裂が発生、髄核が飛び出すことがあります。この飛び出した部分を「ヘルニア」と呼び、このヘルニアが近くを通る神経を圧迫して痛みやしびれなどの症状を引き起こすのが、「腰椎椎間板ヘルニア」です。
腰椎椎間板ヘルニアの治療方法は?
腰椎椎間板ヘルニアは自然に縮小したり、大きさは変わらなくても症状がおさまるケースも多いため、まず保存療法で様子をみます。症状が長く続く場合(3ヶ月以上)や、症状が出てからの期間が短くても痛みやしびれが強くて日常生活や仕事に支障がある場合には、椎間板内酵素注入療法や手術療法を検討することになります。
椎間板内酵素注入療法の「ヘルニコア」とは?
ヘルニコアの有効成分コンドリアーゼは、髄核の保水成分(プロテオグリカン)を分解する酵素です。飛び出して神経を圧迫しているヘルニアの髄核に適切な量のヘルニコアを注入すると、コンドリアーゼによって髄核内の保水成分が分解され、水分による膨らみが適度にやわらぎます。その結果、神経への圧迫が改善し、痛みやしびれが軽減すると考えられています。
ヘルニコアの治療の手順
①レントゲン台に横になり体の位置を調節します(X線でヘルニアのある椎間板を確認、針を刺す場所を決めます)
②針を刺す位置を消毒します
③ヘルニアのある椎間板内に針を刺し、ヘルニコアを注射します
④しばらく安静にします(薬による副作用がないかなどの確認をします)
⑤医師の診察を受け、問題がなければ帰宅できます(※医師の判断で1~2泊の入院となる場合があります)
ヘルニコアの注意点
・過去にヘルニコアによる治療を受けた方は再度ヘルニコアの治療を受けることはできません
・投薬によるアナフィラキシーの発現の可能性があります(アナフィラキシーとはアレルギー反応の1つで、短時間で全身性にアレルギー症状が出る反応)
・ヘルニコアの主なJ副作用として、一過性の腰痛や下肢痛、発疹、発熱、頭痛がみられることがあります
・以下に該当する方はヘルニコア治療に注意が必要ですので、治療前に必ず医師に相談してください
- アレルギー体質の方
- 「腰椎不安定性」の疑いがあると医師から言われた方
- 変形性脊椎症、脊椎すべり症、脊柱管狭窄症などヘルニア以外の脊椎疾患のある方
- 骨粗鬆症、関節リウマチのある方
- 妊娠中の方、妊娠している可能性のある方、授乳中の方
担当医より
腰椎椎間板ヘルニアの従来の治療は、薬物治療やコルセット・神経ブロックなどの保存療法で様子をみて、十分な効果が得られない場合は手術療法を選択せざるを得ませんでしたが、椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア)はこれらの中間的な治療として新しい選択肢となっています。治療後の診察で問題がなければ帰宅できることもあります。
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