脳腫瘍とは
脳腫瘍の分類は世界保健機構の定めによると現在130種類以上存在します。頻度の多いものに「髄膜腫」「神経膠腫」「転移性脳腫瘍」があります。症状は腫瘍の部位や大きさ、周囲の構造物との関係により大変多岐に渡り一概には言えません。よく想定される頭痛症状は大きな腫瘍や水頭症を合併した場合にしか発生しないことが多く、症状がないもの、予測できない症状でみつかるものが多いのも特徴です。
当院における治療方法
腫瘍の種類・部位・大きさなどによって治療法や手術の方法が異なるため、個々の病態に併せた治療が必要となります。年齢や腫瘍の大きさ、症状を診断した上で経過観察、手術による摘出、放射線治療、化学療法などの治療方針を選択します。 開頭手術を行う場合、当院ではナビゲーションシステムを利用可能です。自動車のナビゲーションと同じで、術中の患者さんの術野で今、どこの作業をしているのかが画像と連動してナビゲーションに表示されるのです。これにより安全に腫瘍を摘出することが可能になります。
髄膜腫について
髄膜腫は、脳を覆っている膜(硬膜)から発生する腫瘍で、脳や血管などの構造物を圧迫しながら大きくなっていく腫瘍です。最近は、頭部外傷・脳ドックなどでCTやMRIなどの画像診断を受けて、無症状で見つかる場合も増えてきました。症状がある場合は積極的な治療を要することが多いです。
当院における治療方法
治療には、①経過観察 ②手術 ③定位放射線治療(ガンマナイフ等)があります。髄膜腫は良性であることが多く、全摘出が達成されると再発のリスクを下げることができます。そのため、症状が出ている場合は基本的には手術が第1選択です。手術の前にカテーテルで腫瘍の栄養血管を塞栓したり、場合により放射線治療を優先させることもあります。無症状の場合は大きさ、周囲の構造物(神経や血管など)との関係性、周囲脳の浮腫の有無、患者さんの年齢や全身状態、合併症の有無やその状態、内服薬の状況、患者さんの希望など、様々な因子を検討して治療方針を決めていきます。
神経膠腫について
神経膠腫とは、脳の細胞(グリア細胞)が腫瘍化したもので、グリオーマとも呼ばれています。10万人あたり3人程度に発生する代表的脳腫瘍です。その悪性度はさまざまで、比較的良性のものから最も悪性度の高い膠芽腫(グリオブラストーマ)まで多くの種類があります。脳という重要な臓器に浸潤性に進展して機能障害をもたらし、仮に低悪性度でもゆっくりと進行・悪性化していき、いずれは脳ヘルニアや脳幹の直接障害により致命的となるため臨床的には悪性といえます。適切な診断・治療が必要です。
当院における治療方法
一般的に、手術・放射線治療・化学療法などを組み合わせた治療が行われます。グリオーマは悪性度によらず正常脳に浸潤する形で発育します。さらに脳組織は部位により重要な機能があるため、手術による腫瘍細胞の全摘出は多くの場合不可能です。したがって、手術後に残存した腫瘍細胞に対して多くの場合放射線治療と化学療法が必要になります。当院では放射線治療ができないため、神経膠腫が強く疑われた場合は近隣のがんセンターや大学病院へ紹介するようにしています。
転移性脳腫瘍について
がんの原発巣から血液にのって流れてきたがん細胞が脳に生着して大きくなったものが転移性脳腫瘍で、成人の頭蓋内にできる腫瘍のなかで最も頻度の高いものです。原発巣の治療経過中に発見されたり、何らかの神経症状が出現して転移性脳腫瘍が原発巣より先に発見される場合もあります。1箇所のこともありますが同時に複数箇所に腫瘍が見つかることが多いのも転院性脳腫瘍の特徴です。
当院における治療方法
転移性脳腫瘍に対する治療は大きく分けて ①手術 ②放射線治療があります。手術による治療は全身状態が安定していて、3cm以上の大きい腫瘍、周囲の脳浮腫が強い場合、腫瘍が1箇所で脳の表面に近く重要な機能のある場所(運動野・言語野など)と離れている場合に考慮されます。大きさが比較的小さく、複数箇所ある場合には放射線治療が適応になります。局所に比較的高線量が照射できるガンマナイフ治療もしくは腫瘍があまりにも多数みられる場合には全脳照射を行います。手術をしてから放射線治療を行う場合もあります。また放射線治療の感受性が高いがんとそうでないがんがありますのでどう治療するかはがんの種類、場所、病変の数などを踏まえた適切な判断が必要です。