脳動脈瘤とは
脳動脈瘤とは、脳動脈の血管壁が風船のように瘤状に膨らむ状態です。脳動脈瘤の多くは、脳ドックや検査で未破裂の状態で発見され無症状ですが、中には徐々に増大して周囲の神経を圧迫することで目の上や奥の痛み、顔の知覚低下や麻痺、瞳孔散大、視野異常、眼瞼下垂などの症状を来すことがあります。破裂をすると「くも膜下出血」となり、突然の激しい頭痛・頚部痛で発症し、死亡や後遺症のリスクが高い疾患です。
脳動脈瘤の破裂率は、欧米人と日本人で異なる事が知られています。日本人は、欧米人の2.8倍も破裂のリスクがあると言われています。破裂率は部位や大きさによって異なり、治療を検討するのは ① 5mm以上の動脈瘤 ② 5mm未満でも症状がある・破裂しやすい部位・形状などの特徴を有する場合です。くも膜下出血を発症した場合は、最重症で手術が不可能な症例を除いては動脈瘤の再破裂を予防する治療が必要です。
検査方法
MRA検査、CT血管撮影、脳血管撮影(カテーテル検査)など
▼MRA検査:MRI装置を用いて体内の血管の状態を立体画像化して調べる検査です。造影剤やカテーテルを使わずに脳血管を観察できる検査法です。
▼CT血管撮影:静脈内に造影剤を急速注入しながら通常のCT検査を行います。造影剤によって正確な血管の形を知ることができます。
▼脳血管撮影(カテーテル検査):カテーテルを太ももの動脈から脳動脈の近くまで移動させて造影剤を注入し、脳血管の状態を調べます。血管の形だけではなく、血液の流れ方の情報も分かる検査です。
当院における治療方法
当院における脳動脈瘤の治療は、開頭手術と血管内手術(カテーテル)があります。
開頭手術
- クリッピング術:動脈瘤を金属(チタンで作られたクリップで閉塞させる
- コーティング術:動脈瘤をテフロンの繊維で覆って破裂を防ぐ
- トラッピング術:動脈瘤に対するクリッピング術が困難な場合に動脈瘤より遠位血管にバイパスを作っておいて動脈瘤を血管ごと閉塞させる
当院では上記のすべてに対応しています。
血管内手術(カテーテル)
血管内手術では動脈瘤の中にカテーテルを誘導し、コイル(細い金属の糸)を詰め動脈瘤に血流が入らないようにします。脳血管内治療専門医が手術を担当し、症例に応じてバルーンと呼ばれる風船やステントを併用して治療ができる体制が整っています。フローダイバーターと呼ばれる特殊なステント治療が必要になる大型の動脈瘤の治療は大学病院等治療可能な病院へ紹介しています。
今中
当院における脳動脈瘤症例は年間約40〜50例です。そのうち未破裂脳動脈瘤は3〜4割、開頭手術と血管内手術は半々くらいで、動脈瘤の部位や形状・治療の難易度に応じて適切な手術方法を提案し、最終的には患者さんご本人やご家族の希望に沿って治療方針を決定しています。